ふれあいQ&A


2006年6月のQ&A


『共謀罪』(組織犯罪処罰法改正案)について 2006.6.19[Mon]
メールありがとうございます。『共謀罪』についてご質問がありました。公明新聞等を参考にお応えさせて頂きます。

Q1.マスコミなどで報じられている『共謀罪』について詳しく説明して下さい。
A1.正式には「組織犯罪処罰法改正案」といいますが、今国会は会期を延長しないこととなり、この法案は継続審議となりました。

経緯
 国際的なテロ集団や犯罪組織(マフィアや暴力団等)によって人身売買や麻薬取引、殺人といった重大犯罪が世界中で頻発しております。そのような犯罪に対し、国際社会が一致団結して防止に取り組んでいこうと、国際組織犯罪防止条約(国際的な約束)が2000年に国連総会で採択されました。
 署名国は147ヵ国、条約締結国は120ヵ国に上っています。G8国(主要8国)中でもカナダ、フランス、ロシア、米国、英国がすでに締結。ドイツとイタリアも国内手続きを終えるなど、日本以外は同条約を締結するための国内法整備を終えています。
 日本も2003年に同条約を承認しました。同条約は、各国が組織犯罪を処罰するための法律として「組織的な犯罪の共謀罪」(共謀罪)をつくることを求めています。この承認に基づいて、同条約締結のため「組織犯罪処罰法改正案」を新設する必要があるため法案を作ったものです。

Q2.なぜ共謀罪が必要なのか?
A2.国連条約に基づき、テロなど組織犯罪の防止に国際社会が一致して取り組むため、国内法の整備が必要です。

 テロ集団や暴力団、詐欺集団などによる組織犯罪は、組織の論理によって構成員が命令通りに動くため、犯罪実行の可能性が非常に高く、一度実行されると社会に多大な被害を及ぼします。そのため、計画の段階で犯罪を阻止しようというのが共謀罪の目的です。
 さらに、同条約では、国際的な組織犯罪の捜査や訴追における国際協力に関する規定が設けられ、締結国間での組織犯罪対策の協力を促進することとしています。
 こうしたことから共謀罪をつくるための国内法を整備することによって、国際的な組織犯罪から国民を守ることが期待されます。

Q3.一般の人が対象になるのか?
A3.なりません。組織犯罪集団が共謀し、具体的な準備を行って、初めて処罰の対象になります。

 しかし、条約に基づいて各国が足並みをそろえて共謀罪をつくらなければ、そのような助け合いができず、未整備国は、国際的な組織犯罪防止網の抜け穴になる恐れすらあります。

 国連の国際組織犯罪防止条約に基づいて政府が提出した、共謀罪の新設を柱とする組織犯罪防止法改正案では、共謀罪の対象が、拡大解釈されて一般の会社やNPO、市民団体までも対象にされるのではないかとの不安が出されていました。

 そこで、与党はそのような心配を払しょくするためにこれまで、対象団体を組織犯罪集団に限定するとともに、単なる共謀だけでなく、逃走経路の下見などの一定の行為があって初めて処罰できる修正案を2度にわたり提出してきました。

与党修正案のポイント
第一のポイント
 共謀罪が対象となる団体を「組織的な犯罪集団」と明記した上で、「共同の目的が長期5年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪を実行することにある団体」と、対象をより厳格にし条文上明らかにしました。
 これによって、暴力団や、振り込め詐欺、リフォーム詐欺などの詐欺集団、テロ集団といった明らかな犯罪組織だけが共謀罪の対象に限られることになりました。

第二のポイント
 国民の不安を解消するために「思想や良心の自由などを不当に制限するようなことはあってはならない」「労働組合などの正当な活動を制限することはあってはならない」との規定を盛り込みました。

第三のポイント
 共謀罪の処罰条件として「共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という要件を追加しました。すなわち、共謀をしただけでという内心の段階にとどまらず、さらに進んで実行に向けた外部的な行為が行われた場合に初めて処罰の対象となるということに限定しました。
 例えば、殺人の共謀をして犯行現場の下見に行く行為、犯行現場に赴くためのレンタカーを予約する行為などが考えられます。これによって「共謀罪は人の内心を処罰することになってしまうのではないか」との心配も払拭されたことになります。

Q4.民主党が出した対案をどう見ますか?
A4.国連条約に違反する内容なので、成立しても条約締結ができません。

 与党修正案では対象団体と処罰の要件を明らかにしているため、例えば、サラリーマンの酒席での冗談話が共謀罪になることも、正当な活動をする団体が共謀罪の対象になることも、ありません。

 民主党の修正案は、615に及ぶ共謀罪の対象犯罪の数を減らすべきとし、「5年超の懲役・禁固に当たる」犯罪に限定するよう求めています。さらに、国際性(越境性)を要件にするようにも求めています。

 しかし、民主党の主張する修正案は、国連の国際組織犯罪防止条約が求める「4年以上の懲役・禁固に当たる犯罪」(2条)と、「国際的な性質とは関係なく定める」(34条2項)との規定に反するものです。これでは、国内法を整備しても条約を締結することはできません。

 更に民主党は、条約の締結に当たって条約の特定の条項を制限する「留保」を付けるよう主張していますが、「(民主案は)条約の核心部分に反しているため、留保は難しい」(藤本哲也・中央大学法学部教授)と指摘されています。

 民主党案では条約を締結できないので、立法する意味はありません。民主党は条約を承認したのに、それに反する案を出すのは自己矛盾も甚だしいといえます。

 しかも与党は、民主党修正案のうち、条約に反しない部分を最大に取り入れて与野党共同の修正案にしようとも呼び掛けてきました。自民党と民主党の協議はこれまで10回以上に及んでいます。しかし、民主党は国連条約に反する同党修正案に固執するのみで、共同修正を行うことも、与党の再修正案に対する対案を出すこともできないままでいるのが実情です。

 「できるだけ多くの人が納得できる法改正に」との与党の歩みよりに対し、民主党の不誠実さがあらわになっています。この法案は国際的に約束したことを実行しなければならないことを考えると、早急に法案を成立すべきものでありますが、結果は、前に述べたとおり今国会では継続審議となってしまいました。
 概略は以上のとおりですが、なお公明新聞には詳細に解説されていますので、是非ご覧下さい。
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