ふれあいQ&A


2005年4月のQ&A


「チャイルドファースト」2005緊急提言 2005.4.2[Sat]
「チャイルドファースト」2005緊急提言
もっと「生まれたい社会」へ

公明新聞:2005年4月1日付

 新エンゼルプランや待機児童ゼロ作戦など、これまでも少子化対策の様々な取り組みが行われてきましたが、依然、少子化傾向に歯止めがかかっておらず、これまでの施策の検証や効果的な支援策について、さらなる検討が必要です。
 子どもを産み育てることは個人の選択の問題でありますが、産み育てる意志がありながら様々な阻害要因がある時、それを排除するのは国の責任であると同時に社会全体で責任を分担する仕組みが必要と考えます。子育ての経済的・精神的負担など、あらゆる手立てを講じてその要因を排除し「子育ての安心」を確保しなければなりません。
 また、これまでの政策は子どもを産み育てる「親」に対する対策が中心でしたが、視点を移し「生まれ出る生命」「生まれた子どもたち」に対する対策を考え実行することが重要です。生まれ育つ主役は子どもたちであり、育つ環境がどのようなものであれ、公平に社会からの支援を受ける権利があるからです。
 公明党は、「子どもの幸せ」や「子育ての安心」が確保される社会こそ、国民すべてにやさしい社会であるとの考え方に立ち、子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援するシステムを構築すべきと考えます。明日を担う子どもたちの健やかな成長のため、「チャイルドファースト」(子ども優先)社会の構築を目指し、以下の具体的項目について提案するものです。平成18年度予算での実現を目指しますが、合意に時間のかかる問題も含まれています。公明党が全力を挙げて、早期に実現を目指す課題であります。

1、もっと、子どもの笑顔を。国に子育て支援大臣を 

○次世代育成支援特命大臣(仮称)の設置
 *政府の次世代育成支援施策を総合的に推進する。
 *大臣の下に担当局をつくり、各省庁の連携を強化する。
 *民間との協力体制をつくり、改革への運動を展開する。

2、もっと、「生まれたい社会」へ。子育て中心の社会へ

○児童手当の拡充
 児童手当の対象年齢を小学校6年生まで拡充し、所得制限を緩和する。将来的には中学校3年生までの引き上げを目指す。
○乳幼児医療費助成・軽減の拡充
 対象年齢の拡大など乳幼児医療費の助成・軽減措置を国・地方で連携して推進する。
 *医療費助成の対象年齢を拡大し、所得制限の撤廃を目指す。
○小児救急医療体制等の充実 
 子どもの病気の緊急時に夜間・休日でも対応できるよう、小児科医師を基幹病院に集約し、地域の小児救急医療体制の充実を図る。また、病気回復期の乳幼児を一時的に預けられる病後児保育を充実する。
○出産育児一時金等の見直し
 出産育児一時金を引き上げ、妊産婦健診の助成を拡大する。また、不妊治療の助成を充実する。
○保育サービス間の連携強化
 自治体が軸となって、幼稚園・保育所とファミリーサポートセンター、ベビーシッター等の保育サービス間の連携の推進を図る。
○子育て支援ネットワークの充実
 地域で実施されている独自の子育て支援ボランティア・NPO等の育児支援組織の公的支援の拡充を図る。
○地方自治体の子ども担当窓口の一本化
 福祉・教育などに分かれている地方自治体の子ども担当窓口の一本化を推進する。また、地域における異世代間交流の活性化を図る。
○奨学金制度の拡充
 基準を満たす希望者全員に奨学金を貸与するよう制度の充実を図る。
○ひとり親支援
 シングルマザーの個別の状況に応じた自立・就労支援をハローワーク等と密接な連携を図りながら促進する。シングルファーザーも含め、子育て支援を強化する。

3、もっと、子どもへの時間を。生活時間を犠牲にしない働き方へ

○両立支援に取り組む中小企業への助成 
 育児休業や短時間勤務など安心して出産し、働きながら子育てをすることができるように積極的に取り組む中小企業への支援を進める。
 *育児両立支援の助成事業の拡充
 *育児休業や短時間勤務を奨励するため、100人未満の中小企業に対して、一人当たり100万円の助成を行う。
○男性の育児休業取得の拡充
 男性の育児休業取得を進める企業への支援制度を創設する。育児休業を父親が必ず何日か取得する「父親割り当て制」(パパ・クオータ)の導入を目指す。
○事業所内託児施設の拡充
 事業所内託児施設の設置・運営に係る助成の拡大と設置推進に向けた自治体との連携の強化を図る。

4、もっと、子どもに安心を。子育て優先の街づくりへ

○住宅施策の拡大
 保育所を併設した住宅の供給を推進するとともに、新婚・子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、公営住宅、特定優良賃貸住宅への入居に関する収入基準の緩和や優先入居を進める。また子どもが増えた場合の公営住宅間の住み替えの円滑化を図る。
○バリアフリーの街づくりの推進
 公共交通機関、歩行空間、建築物のバリアフリー化を進め、妊婦、子ども、子ども連れのための「あんしん歩行エリア」を拡大する。また、都市公園等の整備を進めることにより、子どもの遊び場の確保に努める。
○妊婦バッジの普及
 母子手帳発給時に、「妊婦バッジ」の全国での配布を目指し、妊婦の生活環境の改善を図る。
『チャイルドファースト』の基本的考え方 2005.4.1[Fri]
「チャイルドファースト」社会の構築に向けて
少子社会における子育て支援の基本的考え方

公明新聞:2005年4月1日付

 公明党少子社会総合対策本部(本部長=坂口力副代表、前厚労相)が、トータルプラン策定に向けて31日に発表した基本的考え方「『チャイルドファースト』社会の構築に向けて」と、早期に実現を目指すべき課題をまとめた「2005緊急提言」の全文は次の通りです。

1、トータルプランの策定 人口減少社会に向かっての構造改革

 少子社会の到来が叫ばれて久しいですが、我が国の出生率は、1970年代半ばから低下が始まり、今後30年間はどうしても人口減少が続きます。1990年の「1.57」(出生率)ショックからいわゆる「少子化対策」が本格的にスタートしたものの、15年を経過した現在も改善の兆しは見えていません。また、急速な少子高齢化の進展は、我が国の経済成長や社会保障制度の持続可能性に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
 このため、公明党は各政党の中でいち早く、児童手当の導入や保育所の待機児童ゼロ作戦などを主張してきたのであり、それは万人の認めるところです。政治の中で少子対策の先鞭をつけてきた党であるが故に、ここでもう一度原点に立ち戻り、考え方を整理し、政策の目標を明確にするとともに、今後の国造りについてその方向性を明らかにしたいと考えます。
 少子対策も、長期的には、経済・財政、社会保障制度、教育改革、社会資本整備など、これまでの少子化対策の枠組みにとどまらない、あらゆる社会変動・人口構造の変化にも耐え得る構造改革が必要です。その取り組みの視点としては、「子どもの幸せ」や「子育ての安心」が最優先で確保されるものでなければなりません。公明党は少子社会への挑戦を、国民生活の安心の基盤を構築するための経済・社会システム変革のチャンスと捉え、今後の我が国の目指すべき方向性について、「少子社会トータルプラン」(仮称)として1年程度をかけ、策定します。

2、少子社会と子育て支援のあり方
   
(1)子育ての阻害要因の排除
 少子社会の到来に対しては、その現実を容認する考え方と、社会や経済に及ぼす影響を懸念する意見とが存在します。別な言い方をしますと、将来、日本の多民族国家化を許容する考え方と、日本人中心の日本国を継続する考え方が存在するということです。
 公明党は、子どもを産み育てることは個人の意志に委ねるべき問題でありますが、産む意志がありながら様々な要因により阻害されている事実がある限り、その阻害要因を排除すべきであると考えています。1998年版厚生白書は、出生率回復を目指した取り組みをするにしても、妊娠・出産に対する個人の自己決定権を制約したり、個人の生き方の多様性を損ねたりしてはならない、と述べていますが、もちろん、公明党も考え方を同じくするものです。
 産み育てるために障害となる原因を排除してもなお、国民の意志として少子社会が継続するのであれば、それを甘受しつつ、急激な人口減少によって社会に生じる歪みを緩和する政策をとるべきだと考えます。政党として考えなければならない事は、国民の選択を前提としながら、結婚・出産・子育てを阻害する根本的な原因をしっかり見定め、その排除を必要とする人々の思いに応えるとともに、すでに減少してきている過去の人口構成については、その現在における影響を緩和する政策を同時並行的に実施しなければなりません。
 また、地球規模で見て世界的に今後も急激な人口増加が懸念されていることから、日本一国だけの人口減少問題を取り上げて人口増加政策を論じるべきでないとの意見もあります。しかし、この考え方に対して政府の「人口問題審議会」は、日本は人口増加までを目指すのではなく、著しい人口減少社会になるのを避けようとするものであり、批判を受けるようなことではない、と述べています。私たちもこのような考え方を支持します。

(2)子どもの視点に立った施策への転換
 さらに、今までの政策は、子どもを産み育てる両親に対する対策が中心でしたが、視点を移し、生まれ出る生命、生まれた子どもたちに対する政策を考え実行するように致します。生まれ育つ主役は子どもたちであり、育つ環境がどのようなものであれ、公平に社会からの支援を受ける権利があるからです。税制の扶養控除のように、親の所得によって控除額に格差が生じたり、親の働き方、すなわち正規従業員とパート労働によって、親の育児休業の有無が決まるというのも、子どもの側から見れば極めて不公平です。ですから、私たちは、すべてを子どもから見た施策に転換します。
(3)最優先課題としての重点投資を
 過去15年間に日本でとられてきた「少子化対策」の変遷を見ますと、その内容は多様であり、重点の置き所も変化しています。しかし、識者から指摘されるように、少子化対策のメニューは確かに拡大しましたが、投じられる予算額は高齢者と比較してあまりにも少ない、という批判は甘受しなければなりません。
 財政上厳しい環境の中で、思い切った対策を実行するためには、あらゆる政策の中で少子化対策を最優先課題に位置づけ、予算を効率的に使用することを前提にした上で、国民の負担もあえて求めなければなりません。
 ただ、重要なのは、下記に記す通り、少子対策は決して財政上だけの問題ではないということです。むしろ社会システムの変革こそが「主」であり、財政措置は「従」であるということなのです。

3、新たな次世代育成支援システムの構築

(1)子育てを中心軸に据えた社会システムの構築
 「社会システムの変革」は大きく分けて2点あり、第1は子育てを中心軸に据えた社会システムの構築です。家庭内保育から地域や職域での共同保育へより比重を移すなど、共働き家族の育児を可能にする社会を創造することです。まず育児があって、それに合わせて他の社会システムを決めていく手順が重要です。現在も待機児童ゼロ作戦などを展開し、保育所の充実に努めていますが、これはあくまでも家庭内保育の補助的支援の域にとどまっています。そこで、さらに一歩踏み込み、子育てを軸にして回る社会を構築するため、法律改正のみならず地域の慣習や企業のあり方などの見直しが必要です。
 子育てを両親だけの責任に委ねるのではなく、地域や職域を含め、世代間の協力やNPOをはじめとする民間団体の支援など、あらゆるネットワークの構築によって育むべきです。過去の歴史や伝統、家族構成などの中で息づいてきた子育ての伝統が崩壊している現在、新しい「共助の場」をつくる努力が求められています。もちろん、国や地方公共団体も共同責任を果たすことは当然です。
  ・バウチャー制度、育児保険の導入
 市区町村においては、認可保育所のみならず、認証保育所、無認可保育所、保育ホーム、ファミリーサポートセンター、病児保育所、放課後児童クラブなどあらゆる子育て支援組織を総合的に把握し、役割分担と相互の連携を図り、市区町村民にその情報を提供する体制を構築しなければなりません。いずれの施設や組織を選択するかは利用者の判断に委ね、公的支援は児童を対象に行い、バウチャー(利用券)制度の導入も検討します。
 幼保一元化を一層進め、市区町村で重複する子育て支援行政の無駄をはぶき、効率的な運営を行い、人材育成やボランティアの受け入れなども円滑に行えるようにします。国の体制も専任の「次世代育成支援特命大臣(仮称)」を設置して、その配下に各省から優秀な人材を集め、保育行政と幼児教育行政を統一し、省を超えて一体化した行政を行います。公明党は国や地方公共団体の役割と責任を一層明確に致します。
 子育ての社会的なシステム化を一層進めるためには、安定した財源が必要であり、育児保険の導入も検討することが重要であります。しかし、社会保障関係の保険として、すでに年金、医療、介護、雇用、労災など多様なものが存在しています。各保険の給付をそれぞれ子育て支援に拠出する方法も考えられますが、1年間をかけてさらなる検討を行います。現在、国会においても社会保障全体の見直しが行われているところであり、公明党は子育てを最優先課題に位置づけ、議論を進める決意です。
(2)仕事と生活の調和「生活を犠牲にしない働き方の構築」
 少子社会対策に不可欠な「社会システム変革」の第2は、「仕事と生活の調和」です。しかし日本の現状は、もう少し踏み込んで「生活を犠牲にしない働き方の構築」と表現した方が適切です。仕事と子育ての両立だけでなく、男性を含めた仕事のあり方をいま一度見直す必要があります。このことは企業のあり方にかかわる問題であり、日本のおかれている経済環境とも密接な関係があります。先進国の中でも労働生産性の低さが指摘され、国際競争力に勝ち抜くため、企業は雇用者数を制限し、その分、労働時間を延長しているのが実態です。中長期的視点で見る時、労働生産性の向上は製造業、非製造業を問わず、内容の「質的改善」によって達成すべきものであり、労働強化で対応することは、もはや持続困難です。
  ・多様な働き方に中立な支援を
 また、一度しか存在しない人生をどのように生きるかを考える時に、24時間という有限の時間において、子育てをはじめとする生活時間の確保は、誰人も侵すことのできない個人の権利であると考えます。まず必要なことは、正規労働者、パート労働者を問わず、時間外労働に対しては割増賃金の強化を検討すべきです。
 さりとて日本の経済を支える中小企業に対しては、すべてを自己責任に委ねるのではなく、国、地方自治体の支援を含め時間外労働の短縮など労働環境の改善を支援する必要があります。そこで新技術の開発や新製品の創出についても、強力な支援を行うように致します。
 近年、パート労働、派遣業、有期雇用など多様な働き方が可能になりましたが、これらの働き方は仕事と子育ての両立支援の対象にならなかったり、労働条件の違いや賃金格差を生む結果になっており、本来の趣旨から外れていると言わざるを得ません。いずれの働き方であれ均等待遇を求め、両立支援の対象にするなど法的整備を行います。
  ・若年雇用対策、住宅政策の強化と教育改革
 さらに若年者雇用の悪化も大きな課題です。ほとんどの先進国において若年者の失業率が高まり、その対応に迫られている実態から、我が国も覚悟を決めて取り組まなくてはならない課題です。まず、若年者の雇用率を高めるため、現在進めています雇用と技能訓練のデュアルシステムを一層強化致します。安定した職場を提供することは、少子社会とも大きくかかわる問題であり、若年者の住宅問題と合わせて放置することのできない課題です。また学校教育の問題と総合して若年雇用のあり方について特別に取り上げてまいります。
 教育費の負担が少子社会に与えている影響も深刻です。塾への負担が大きくなっており、義務教育のあり方とともに検討を進めます。
 塾に通わなければ合格できない高等学校や大学等の試験のあり方も含めて議論しなければなりません。

4、子育て優先の社会に

 以上、少子対策に取り組む基本的な考え方と主な課題について記述しましたが、少子対策はまさしく国のあり方を問うことになります。核家族化が進む中で家族内保育だけに頼ることは困難になりました。アメリカのように民間市場で支援を求めようとすれば低賃金の労働力が必要になり、先進西欧諸国のように公的支援を強化すれば国民に大きな負担を求めなければなりません。手厚く子どもを産み育てることによって、次の世代が盤石になり、年金のようにすべての国民がその恩恵に浴することを考えれば、国民全体で子育てを支えることが日本の選択肢であると考えます。アメリカ型も西欧型も支出が増大することに変わりはありませんが、アメリカ型では子育てをする人の負担に集中し、西欧型では国民すべてに負担が分散されます。さりとて、先進西欧諸国のように大きな負担を受け入れる土壌が日本にないことも事実であり、効率的で重点的な支援をどう確立するかが問われています。公明党は社会保障予算の中で、子育て支援を最優先に考えますが、とはいえ、日本の財政再建は厳しいものがあり、全体像を十分に考える事は当然と言わなければなりません。
 我が国が、今後も子育て阻害要因を排除しようとする限り、子育て支援の社会システム化は避けて通れない道であります。競争原理と規制緩和の必要性を認めながらも、連帯と協調を忘れてはならない事を、少子対策が教えていると、公明党は受け止めています。

<おわりに>

 1、日本は、将来多民族国家を許容するのか、それとも日本人中心の日本を継続するのか、選択する時が近づいています。公明党は、子どもを産み育てることは個人の意志に委ねるべき問題でありますが、産み育てる意志がありながら様々な阻害要因がある時、それを排除するのは国の責任であると考えています。その上で、どのような国を造るかは国民の総意によって決定される問題であります。
 2、子どもを産み育てやすい環境は、大きな社会システムの変革を必要とするものであり、特に子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援することが必要です。さらに必要なことは、生活時間を犠牲にしない働き方を構築することであり、このことは企業のあり方や産業構造とも関連し、抜本的な改革が必要です。
 3、子育て支援は、教育費や若年雇用とも深くかかわり、また、高齢者の社会保障とも関係の深い問題です。青壮年の働き方も加えれば、人生の各段階に影響する問題であり、決して母と子の問題に矮小化してはならない課題です。それぞれの年齢各層の人々には自分たちの問題として強い関心を惹起しなければなりません。
 4、国が何をなすべきかを考えた時、一つの局や一つの省で解決できる問題ではなく、政府一丸となって対応すべき取り組みであり、今こそ担当特命大臣を置く必要があり、政府に決断を求めるものです。社会保障全体の財源が今議論されているところでありますが、あえて公明党は、子育て支援を最優先に位置づけ、厳しい財政の中であることを理解した上で特別に検討すべきであると考えます。
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